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「森さん」を偲んで

 森さん、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。改めて振り返ると、ご指導を受けるばかりで,少しもお返しができなかったことが大変残念でなりません。(森さんは、当時大学生であった私たちが、普通にはお目にかかることすらできないような大先輩でしたが、自ら「森さん、でいいよ」と仰り、私たちに歩み寄ってくださいました。ここでは、当時を思い出しながら、敢えて「森さん」と書かせていただきます)。


 私と森さんとの出会いは、2007年のSIVでした。当時、欧米でITを中心とした破壊的なイノベーションが巻き起こる中、慶應から未来を先導する新事業を生み出したい、という想いを持った多くの方達が、SIVというエコシステムに、導かれるように集まっていました。私は、ビジネスコンテストの企画運営等を行っていたKBC実行委員会の一員として、当時メンター三田会の会長でいらした森さんに、ビジネスコンテストの審査員としてご参加いただくとともに、日々の運営についてのご助言を頂いていました。

 

 当時を振り返ると、森さんは、学生という、言わば社会に出る前の保育器的環境にいる我々に対して、外の世界―即ち「社会」を教えてくださる、親のような存在でした。

ビジネスコンテストは、新事業の創出のために協働しようという活動です。その根幹は、事業アイディアという種を、いかに社会という大地に根付かせるかです。しかしそれを、未だ社会を知らない学生が、社会とはどんな世界かを想像しながら行うということは、目の前の大地が、何を育てるのに適していて、どんな厳しい環境が待ち構えているとも知らず、種を撒かんとする事でもありました。


 振り返ると、何とも暴虎馮河なことのようにも思えますが、その取り組みの側に、いつもそっと寄り添っていて下さっていたのが、森さんでした。頂いた数えきれないご助言を列挙するには紙面が足りませんが、社会に出て世の中を知り、改めて振り返ると、こう仰っていたのだと思います。

「この土地がどのような土地であるかを伝えよう。そこにどんな雨風が吹き付け、どう耐えれば良いかの知恵を伝えよう。そして、この土地を耕し、何の種を植えるかを選択し、どのような世界を創りたいかを考えるのは、君たちだ。」


 森さんにお礼を申し上げると、いつも決まって、「礼は良いから、後輩にも同じことをしてあげるんだよ」と仰いました。

森さんの最後に立ち会い、お礼を申し上げることができなかった無念と不幸をお詫びしながら、学ばせていただいたことを受け継ぎ、後輩に伝えていくことを誓い、心からの哀悼の意を表する次第です。

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